オリジナル塗装に込めた思い
建物価値が続く品質へのこだわり
セキスイはこれまでオリジナルの“塗装技術”を追求し、進化させ続けてきました。なぜ独自の塗料・施工にこだわるのか?セキスイの構造・塗膜に適した塗料を、塗料メーカーと共同開発するところから始まり、JIS規格の評価試験に対する独自のより厳しい基準の設定、新たな評価方法の開発、施工技術の確立に至るまで強いこだわりを持って、今もなお進化させ続けています。それは、「これほど厳しい条件で品質を追求する企業はなかなかない」と塗料メーカーから驚かれるほど。そのベースには、すべての住まいの価値が永くあるためにという強い信念があります。
住まいの価値を永く維持するために。
オリジナル塗料開発への挑戦。
一般的に住宅に使われる塗料は、JISに沿った品質基準でつくられています。もちろんセキスイのオリジナル塗料もJISで定められた評価項目をクリアしています。大きな特徴は、その評価項目に対し独自の厳しい基準を合格ラインとして設定していること。さらに独自の評価項目を加えることで、高い品質を実現している点です。
「実はJIS規格は、それほど厳しくないんです。例えば塗装面を水に浸けて行う耐水性の試験でも、JISが10日間(240時間)の浸水時間なのに対して、セキスイでは750時間の浸水時間で外観評価を行います。これだけでもJISとセキスイでいかに求める品質が違うかがよくわかると思います。塗料メーカーとしてこうした厳しい基準をクリアするのには大変苦労しました」と塗料の共同開発を行なった塗料メーカー・藤倉化成株式会社の渡辺氏はおっしゃいます。
これほど塗装の品質にこだわる背景には、セキスイが住宅メーカーとして建物価値を永く保つためにどうするかを考え、お客様の声も参考に基準項目を必要に応じて見直してきた歩みがあります。
中でも、とりわけ厳しい基準を設けているのは「目地追従性」「密着性」「耐候性」、そして独自の「耐エフロ性」の4つの性能。「住まい価値」を維持するために欠かせないこれらの性能とこだわりについてご紹介します。
セキスイでは、とくに塗膜に影響を与える要因である「水」「熱」「光」にフォーカスし、試験を実施。JISで定められた試験内容については、より厳しい条件を独自に定めて実施し、塗膜の品質を確認している。
①目地追従性への挑戦
外壁素材と建物の特性に合わせた
ちょうどいい「やわらかさ」
地震や台風による風などの大きな力を受ける外壁。ときに建物が瞬間的にゆがみ、塗膜にも大きな力がかかることがあります。セキスイで使用している外壁のタイプによっては、それが長い年月の中で繰り返し起こるうちに外壁面材の突き合わせ部分の塗膜表面にヒビが入ることがあります。外壁パネルの動きに塗膜がしなやかに追従しきれないことが原因です。
この現象に対応するため、セキスイでは、外壁パネルの突き合わせ部分に貼る特殊なテープ状の目地材とともに、隣り合う外壁パネルにズレ・ひずみが生じても表面にヒビが入りにくい塗料と施工方法を開発。塗装時にはこの目地材の貼り替えから行い、さらに目地材上に専用塗料を施工します。セキスイの建物の動きに合わせてしなやかに動くよう、あえて「目地追従性」にフォーカスしたのです。
ツーユーシリーズでは外壁パネルの継ぎ部分が多いという建物の構造上、特に塗料の「目地追従性」が重要です。しかし、単に「やわらかければ良い」というものではありません。基材の材質、建物の構造、もともと使われていた塗料などによって適切な目地追従性は異なる上、やわらかすぎると塗膜に汚れが付着しやすくなるという課題もあります。そのため過去の商品に遡ってさまざまな外壁・塗料・構造ごとに評価試験を実施。評価された数値をもとに、塗料のベースとなる樹脂の組成を何度も見直し、現在の目地追従性に辿り着きました。
②密着性へのこだわり
下地の塗料・状態によって異なる
密着性を、さまざまな条件でチェック
「密着性」は、塗膜を長持ちさせるために不可欠な要素です。密着性が低いと下地と塗膜の間に隙間ができ、そこに入った空気が温度変化によって膨張し「剥がれ」という現象が発生することがあります。美観においても耐久性においても問題となります。
しかし「密着性」を高めるには、塗料単体の成分・機能で考えるだけでは解決できないケースもあります。なぜなら、もともとの外壁に使われている塗料の成分や劣化の具合によって、密着性が大きく左右されるからです。
セキスイでは住まいの価値を永く保つために、部位ごとに異なる耐久性を持つ塗料を使い分けています。そのため、単一の塗料でまとめて塗り替えをしてしまうと密着性にバラつきが出る可能性があります。塗装の開発段階においては新築時の塗料・塗膜性能に合わせた塗料を実現するために実際採用されている外壁基材を評価に使用。もとの塗料のメーカー・製品ごとに精度の高い性能評価を行なっています。
新築時は部位の特性に合わせてそれぞれ異なる塗料が使用されている。セキスイで再塗装用の新たな塗料を開発する際には、部位ごとに異なる塗料との相性を評価し、それぞれに必要な密着性を確保することを数値で確かめている。
しかし最近では新築時に使われる塗料の高耐久化が、塗り替え時の新たなハードルとなっています。たとえば、セキスイの外壁では2003年頃から順次導入され始めた「UVA塗装」は、従来の上塗層の上を「クリア層」が覆っていて、そこには顔料が含まれていません。顔料の代わりに紫外線吸収剤(UVA)が含まれており、奥の層にある顔料を守る構造になっているため、いわゆるチョーキング現象(※)が表面に出現しないのです。そのため劣化状況の判断がつきにくいだけでなく、再塗装品質が問題視されるようになりました。
ツーユーホームのUVA塗装外壁で、再塗装時に下塗り塗料で下地処理を行なって塗装を重ねたところ、再塗装塗膜が剥がれる現象が発生。外観の劣化が少ないように見えても、上塗層にも小さなクラックが入っていて塗膜の表面が劣化していると判明したのです。表面が傷んだままで塗料を重ねても密着性は発揮できないという大きな課題にぶつかり、セキスイと塗料メーカーとの試行錯誤が始まりました。
UVA塗装外壁の劣化現象
一般的な塗装外壁では「チョーキング」により劣化がわかるが、高耐久のUVA塗装外壁ではルーペで拡大しなければ劣化具合がわからない。一般塗装とUVA塗装を目視で見分けるのは困難で、再塗装における適切な塗料・塗装方法をその場で判断するのは難しい。
「私たちはセキスイからのデータをもとに、下地処理方法の開発に着手。劣化して表面から数ミクロンほどの深さまでボロボロになっている部分があり、それが密着性を低下させる原因だと明らかになりました。その部分を薄く削り取り、表面を活きた面にする独自の処理を実施。処理には特殊な化学薬品を使用し、下塗りではない方法で、塗料がしっかりと密着するように下地処理する方法を開発しました」と渡辺氏は当時を振り返ります。
UVA塗装は塗膜の劣化が目で見てわからない分、セキスイ専用のノウハウがない塗装業者さんでは適切な塗料選びや下地処理は難しいと言えます。新築時に使われている塗料や材質のデータ、それらが経年によってどう劣化するかについての研究データがカギになるのです。セキスイは住宅メーカーとして蓄積してきたデータをもとに、塗装品質向上を常に進化させています。
③「耐候性」への執念
実験室での評価に耐候性品質の限界を実感。
リアルにこだわった紫外線試験
耐候性の評価に関しては、もともとJISで定められた「促進試験」を採用していました。「促進試験」とは、人工的に増幅させた光に塗装面を晒して品質を評価する方法です。しかしその評価方法で耐候性の基準を満たしていると判断された新たな塗料を導入したところ、現場から想定より早く劣化の兆しが現れた、と厳しい評価が寄せられたのです。そこで積水化学工業の住宅技術研究所で試験内容そのものの見直しがスタートしました。
白羽の矢が立ったのは、EMMAQA®︎(エマッカ)という評価方法。これは実験室で人工的な光を使って行う従来の試験とは異なり、実際の太陽光で行うものでした。
当時は主に自動車の塗装性能評価に使われていた手法でしたが、自然に近い曝露条件を再現できると考え、セキスイはその評価方法を住宅の外壁に採用することにしました。
EMMAQUA®︎の試験は強い太陽光が降り注ぐ砂漠地帯であるアメリカ・アリゾナ州で行われるため、当時のセキスイ担当者は外壁のサンプルとともに渡米。太陽光と同じ波長のまま全波長領域に数倍強度の光を集めて行う試験を経て、耐候性を評価しました。EMMAQUA®︎は従来の方法よりも時間がかかりますが、外壁に加わるダメージを実際の屋外環境に近い状態で再現することができます。理論値よりも実測値にこだわる。セキスイのこの姿勢も、「続く住まい価値」へのこだわりです。
④耐エフロ性の解明
独自にこだわった「美観の維持」。
外壁・屋根の内部にまでメスを入れる
「エフロ」とは「エフロレッセンス」の略称で、セメント系材料内部の物質が雨水などの水分と反応し、表面に流れ出て固まった白い物質のこと。一般的にはコンクリート床や壁で見られることが多く、美観を損なう原因の一つでした。セキスイでは常にお客様からいただく声をもとに塗料・塗装方法を進化させてきましたが、ある時期に軒天に多くの「エフロ」発生が報告されたことがありました。
実は「エフロ」については、JISで定められた評価基準はありません。しかしセキスイでは、軒天に発生するエフロについて徹底調査を行い、塗装に関する評価方法の開発に取り組みました。
調査の結果、軒天は塗装面(外側)からの水濡れだけでなく、屋根内の換気経路(内側)からもわずかな水分流入があり影響していると判明。それぞれの水に含まれているエフロ成分があり、外側についた水が内側の水を誘い出すトリガーとなり、塗膜を通してお互いが結合。滲出して乾燥し、エフロ化するメカニズムが明らかになったのです。そこで外側・内側から濡れた状態を再現するためにあらかじめ基材に十分な水分を吸収させ、その状態で塗膜がエフロ成分を通すかどうかを評価する方法を開発しました。
エフロ発生のメカニズム
外側に付着した水分と、軒天内部の水分とが結びつくことでエフロが発生していることが判明。内部構造を知り尽くしたセキスイだからこそ明らかにできたと言える。
現場の声を品質改善の指標にする。塗装面だけでなく住まいそのものの構造から解決策を探る。その積み重ねで進化してきた他に類のない品質を実現した塗料は、「永く、美しく」を叶えたいというセキスイの執念の結晶なのです。
目に見えない、手の届かない部分まで。
何十年先も住まいの価値を保つ
施工品質確立への挑戦
「塗装面だけでなく住まいの構造全体を見る」がセキスイの基本姿勢。塗装面を見るだけでは、長い目で見た際に不要なメンテナンスコストにつながる可能性があるためです。建物を熟知しているからこそ目が配れる部分があることは大きなアドバンテージ。また、住まいの価値を保つために点検箇所・施工場所・施工内容をしっかりとマニュアル化し、独自のノウハウをすべての塗装現場に展開しています。
外壁だけでなく、設備の裏側まで。
構造を知り尽くしているからこそ、できる施工がある。
セキスイではどの現場でも同じ品質で塗装が行われるよう、塗装に付随する設備に関する作業まで記載した「施工マニュアル」を作成しています。高圧洗浄、コーキングの補修、セメント成形部材の下地処理、シンセライト外壁の下地補修などについて、施工前の確認事項・施工部位・施工手順・注意点などを細かく定めているのです。
またどの現場でも同じ品質で施工するために、工場生産時に使用した部材・部品やお引き渡し後の修繕内容などの履歴を邸ごとに記録する「Stack & Stream System」のデータを活用し、各邸に必要な塗料の種類・量を計算。すべての塗料を使い切ることで十分な塗膜になるよう、徹底管理を行っています。
こういった施工マニュアルの内容遵守や塗料の使い切りなどについては、各工程の状況を画像で記録し、報告書を作成。さらにメンテナンス履歴に記録しデータを保管する仕組みを構築し、すべての現場における塗装品質の均一化に取り組んでいます。
「基本的に、建物を塗る工程に関しては一般の塗装業者さんもあまり変わりません。ただしその手前の『外壁・部材に合わせた下地処理』が塗装品質をキープするための工程として極めて重要で、ノウハウがマニュアルにまで落とし込まれているところが“純正リフォーム”としての価値ではないでしょうか。また、セキスイの塗装は塗料だけでなく施工の品質も非常に厳しい。一般的な塗装でも換気扇フード・設備周りのコーティングやシーリングくらいは行いますが、セキスイの場合は、庇カバーやバルコニーデッキを取り外した上での内部塗装など、目に見えない部分まで自分たちで施工を行うことが多いです。はじめてセキスイの塗装を行う業者さんは、設備業者に任せず塗装業者がすべてを把握して作業を行なっていることに驚かれます」と渡辺氏。
すべての邸で同じ施工品質を目指して。
施工業者へのスキルアップにも力を入れています。
どれほどこだわった塗料で、どれほど厳しいマニュアルを用意しても、現場で塗装を行う職人さんのスキル・知識・安全への意識が低ければ、お客様の住まいを守ることはできません。セキスイでは、塗装業者や職人さんを対象に施工技術を一定水準以上に保つための技術研修をはじめ、CS研修、マナー講座、安全研修などにも力を入れ、どの邸でも同じ品質でのメンテナンスが提供できるよう取り組みを続けています。
また新商品や塗料・塗装方法が更新された際は、新たな工法について指令書と呼ばれる書類で発信。物件毎の作業指示書に落とし込んで情報共有を行い、施工品質の均一化を目指して取り組んでいます。
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すべてのセキスイハイムの「建物価値」を永く保ちたい、その想いで進化を続けてきたセキスイの塗装。全国の一邸一邸が年月とともに美しさを重ねられるように、これからもさらなる高みを目指して塗装技術の追求は続きます。