ハイムの強さと安心・快適を両立させる
バリアフリー浴室リフォーム
セキスイハイムの鉄骨系住宅は、柱と梁を溶接し一体化したユニットで建物を構成する、独自の「ユニット工法」により強靭さとプランの自由度の高さを実現しています。建物の床構造の関係から、浴室はユニットの床の上に置かれており、出入口に段差が生じていました。しかしバリアフリー化のニーズの高まりとともに、90年代後半から新築住宅ではユニットの中に「落とし込む」浴室が主流となり、その段差が解消されるようになりました。当然リフォームでも、浴室の出入り口の段差をなくすニーズが高まっていきましたが、この段差は「最新の浴室ユニット」を採用すれば解消するというわけではなく、出入り口の段差解消には大きな苦労を伴いました。セキスイハイムの高い構造性能や断熱性をはじめとする優れた性能を損なうことなく、温かで快適なバスタイムを提供するためにはどうすればよいのか。さまざまな施策と実証実験を繰り返しながら、開発者たちはお客様に安心してお住いいただくべく直面する課題に取り組んできました。
構造性能と断熱性能を保つ
「床フレーム工法」の必要性
一般的によく知られている浴室リフォームでは、床下にコンクリートで土間を打ち、その上に浴室ユニットを直置きする「土間置き」工法が多く採用されています。
建物の床下にコンクリート土間を打ち、その上に設置した浴室ユニットの脚の長さを変えて高さを調整するため、段差の解消は難しくありません。また重い浴室ユニットの荷重を建物に負担させることなく設置できる工法ですが、セキスイハイムの鉄骨住宅では、以下のような課題があることがわかりました。
【課題1 】
頑強な鉄骨構造のユニットの一つ一つは平面的には4本の柱で支えられており、柱以外のところは基本的に耐力壁などがなく、可変性が高いのが特徴。対して床面にはその剛性を保つための小梁が複数あり、それを切ってしまうとセキスイハイムの構造性能に影響が生じる可能性がある。
【課題2 】
地震の際、土間に乗っている浴室ユニットは建物とは一体化していないため、セキスイハイムの構造体の揺れ方とはズレがあり、その歪みによりバスの構造や防水性能等にダメージを与えてしまう可能性がある。
【課題3 】
土間置き工法では一般居室と比べ床下からの冷気を抑えることが困難で、浴室ユニットの床や浴槽の裏側が外気にさらされるため、十分な断熱性能を満たすことができない可能性がある。
※浴室ユニットそのものの下部には断熱材が施せるため「無断熱」ではありません。
これらの課題を解決するために、新築のセキスイハイムで採用されていた「浴室用床フレーム」の工法をリフォームにも応用する構想が持ち上がったのです。
強い構造と施工性を両立させる
「床フレーム工法」の誕生
浴室の構造上、出入口の段差を解消するためにユニットの床小梁が障害になることは変わりありません。しかし単にカットしたのでは、構造性能に影響がでることも懸念されます。そこで当初は、浴室ユニットを支え、建物の強度も補完するために浴室用の大きな床フレームを事前に工場で組み立て、現場に搬入してその場で大梁に溶接する手法が採られていました。
「工場で製造され、強度が確保された床フレームをそのまま利用するため、確かにセキスイの構造性能基準をクリアした浴室リフォームが可能でした。しかし運搬や搬入にかかる労力や、ご家庭の浴室で溶接作業をすることは工場作業に比べ品質確保の課題があることなどを考慮すると、リフォームに適したセキスイ独自の工法を開発する必要がありました」と開発担当者は語ります。
さらには冬期の浴槽湯温の低下、洗い場の冷え感を改善するために、床下からの冷気も抑えることができるリフォーム専用の新たな工法の開発が不可欠でした。
構造性能を確保することができ、しかも搬入や作業、資材の調達のしやすさという観点から、新しい床フレームの規格を発見すべく検証を始めた開発者たちが最初に行ったのは、これまで多くの浴室の製造やリフォームを手がけているメーカーからの聞き取りでした。
この意見をもとに仮の規格を設定して、実際に組んだバス専用床フレームに荷重をかける実大実験を実施することにしました。
「難しかったのは、床と浴室それぞれに設けられたセキスイハイムの品質基準を同時にクリアすることでした。実験で荷重をかけた際に生じる『たわみ』がどちらかの基準値を外れてしまうと、バス専用床フレームとしては不適格となります。両方の基準値を超えないようにバランスをとる作業は困難を極めました」
このように、細かな調整により進められた床フレームの規格設定。それはまさに、お客様に安心の住まいを提供するためにわずかな妥協も許さない、セキスイのこだわりを体現するものでした。
また床フレームを現場で溶接しなくてすむ、ボルト式工法の開発も並行して行われました。リフォームでは大梁の外側から加工することが困難なため、床フレームを大梁の外側と内側の両方からボルトで締め付けるのではなく、内側一方からの締め付けのみで、現場で確実に固定できる機能性と強度が必要です。接合部材メーカーとともにその要望に適したボルトを探した結果、この手法に適したアメリカ製の特殊な接合材と工具を採用することができました。
こうして、現場で床小梁を切断し、そこにリフォームバス専用床フレームをボルトで固定するという工法が完成したのです。構造耐力と断熱の課題をクリアし、施工性にも優れた、画期的な浴室リフォームが確立された瞬間でした。
多彩なプランに応える
さまざまな工法の開発
このように開発されたリフォームバス専用床フレームのほかにも、「最新の浴室ユニット」を「出入口の段差なしで」「高いコストパフォーマンスで導入する」ための工法について継続して取り組みを進めています。
ここでは、2つの象徴的な例をご紹介しましょう。
①オーバーハングプランへの対応
新築住宅「アバンテ」で多く採用された、一部が外に張り出す「オーバーハングユニット」に設置した天窓のあるバスルームが「サンシャワーバス」。
1983年の登場から15年を超えた頃、アバンテにお住まいのお客様からも「出入口に段差のない浴室」への変更を望むニーズが高まってきました。しかし、このタイプのバスルームはユニットの大梁をまたいで設置されているという特殊なプランであるため、段差なし仕様は当時の新築でも実現することができていませんでした。ただし新築とは違い、入居済みのお客様は簡単にバスの位置を変更するわけにもいきません。開発者たちは新たなリフォームの仕様を一から検討することにしました。
通常7ヶ月ほどといわれる開発期間に対し、試作と実大実験を繰り返すこと実に12ヶ月。これまで不可能といわれていたオーバーハングプラン専用床フレームは、開発者の知恵と努力を結集させて完成に至りました。
「リフォームにより快適な住まいを望むお客様の望みは、仕様や構造の違いにかかわらず実現するのが開発者としての役目。お客様一人ひとりの思いと、そこから生まれる新たなニーズを探求することに、私たちの仕事の意義があるのだと思います」と担当者は語ります。
②地球にやさしい床フレームの再利用
次なる開発者の挑戦は「床フレームの再利用」です。
新築時に「バス用床フレームを用いた段差なし仕様」だった浴室を交換する際、同じサイズのタイプであっても詳細の仕様や浴室ユニットの荷重を受ける位置が変わっているため、これまでの床フレームに載せることができないケースも出てきます。しかし新しい浴室に対応する床フレームに丸ごと交換するのでは、それだけ施工工数やコストがかかり、さらには古い床フレームを廃棄する資源の無駄遣いという問題も発生します。
そこでセキスイでは、現場でこれまでの床フレームを加工して再利用する方法を検討することにしました。「施工工数とコストの削減」「床フレーム交換時の騒音の軽減」「廃材の削減」という大きなメリットを、お客様や社会に提供することができるためです。
さらには数多くのリフォーム現場を経験した浴室メーカーから「年月が経っても状態のよいセキスイハイムの床フレームなら、再利用した方がいい」という声が寄せられており、それもこの発想を後押ししました。
使えるものは、上手に活かす——。そんな発想からこの取り組みが進められました。
構造性能確保の課題もありましたが、それに加えて開発を進める中では予期せぬ課題が開発者を悩ませました。
「例えば、取り付けた補強金具に荷重がかかる際に床フレームとの間で生じる『カチッ』というわずかな『床鳴り』への対策。金具の形状や床フレームとの接触部分に塗布する弾性接着剤を次々と検討し、解消していきました」
再利用という大きな目的を達成したとしても、お客様に少しでも不自由な状況があったのでは意味がありません。開発では、些細な不具合も見逃さないというモノづくりのプライドこそ重要であると感じさせる取り組みとなりました。
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このようにセキスイの浴室リフォームは、セキスイハイムならではの特性やプラン・建物品質基準に対応するべく、お客様の目に見えない部分の技術革新など「リフォームならではの課題」の解決に取り組んできました。これからもセキスイでは、独自の技術と知見を活かしたさまざまな浴室リフォームプランを提案し、お客様「温かで快適なバスライフ」をお楽しみいただける環境を創造していきたいと考えています。